昔、子どもの頃、お釈迦様の日(4月8日)が近づくと、お寺へ甘茶をもらいに行くのを楽しみにしていました。当日になると急いで学校から帰り、近所の子どもたち大 勢で手に手に色々なビンを持って、お寺へ押しかけました。
お寺では、一石(180リットル)くらい入る大釜で、甘茶をたいていました。集まった大勢の子どもたちが、釜のまわりを取り囲んで、われ先にと順番を待っていました。体の太くて大きい奥様が、みんなの持ってきた一升びん・五合びんなど色々なビンに、ひしゃくで汗を流しながら入れてくれました。あたり一面に甘いお茶の香りがただよい、 何ともいえない良い感じでした。
入れてもらったびんを、壊さないように大事にかかえて帰りました。すると、すずりにその甘茶を入れ、墨をすって長さ15cm、幅5cmほどの半紙に「白仏言」と書いて、家の出入り口や窓という窓の横へさかさまに張りつけていました。「どうしてそんなことをするの」とたずねると「長虫(へび)が入れへんのじゃ。」と言われました。
その後、家のまわりではよく見る長虫も、家の中へ入ってくるのを見ませんでした。
『勝浦のむかし話』より